最近の偽医療や反医療・デマ・陰謀論について思うこと(その4)/(医療・福祉)
- 2014/10/15(Wed) -
■ポケットに、トンデモ話検出キットを!

~今日こそ我々は、世界を神秘主義と暴君から救う。どんな宝よりも光り輝く、未来をもたらすのだ!~(スパルタ人・ディリオスの言葉/300より)


 エセ科学やカルト、偽医療の蔓延を危惧し、市民向けの啓発活動にも尽力していた故カール・セーガン博士は、その著書『人はなぜエセ科学に騙されるのか』(新潮文庫)の中で、“トンデモ話検出キット”として、次のような考え方を示している。

・裏づけを取れ。
「事実」が出されたら、独立な裏づけをできるだけたくさん取るようにしよう。

・議論のまな板にのせろ。
証拠が出されたら、さまざまな観点をもつ人たちに、しっかりした根拠のある議論をしてもらおう。

・権威主義に陥るな。
権威の言うことだからといって当てにしないこと。権威はこれまでも間違いを犯してきたし、今後も犯すかもしれない。こう言えばわかりやすいだろう。「科学に権威はいない。せいぜい専門家がいるだけだ」

・仮説は複数立てろ。

仮説は1つだけでなく、いくつも立ててみること。まだ説明のつかないことがあるなら、それが説明できそうな仮説をありったけ考え出そう。次に、こうやって得られた仮説を、かたっぱしから反証していく方法を考えよう。このダーウィン主義的な選択をくぐり抜けた仮説は、単なる思い付きの仮説にくらべて、正しい答えを与えてくれる見込みがずっと高いはずだ。

・身びいきをするな。
自分の出した仮説だからといって、あまり執着しないこと。仮説を出すことは、知識を手に入れるための一里塚にすぎない。なぜそのアイディアが好きなのか自問してみよう。そして、ほかのアイディアと公平に比較しよう。そのアイディアを捨てるべき理由がないか探してみよう。あなたがそれをやらなければ、ほかの人がやるだろう。

・定量化しろ。
尺度があって数値を出すことができれば、いくつもの仮説のなかから一つを選び出すことができる。あいまいで定性的なものには、いろいろな説明がつけられる。もちろん、定性的な問題のなかにも深めるべき真実はあるだろうが、真実を「つかむ」方がずっとやりがいがある。

・弱点を叩きだせ。
論証が鎖のようにつながっていたら、鎖の輪の一つ一つがきちんと機能しているかどうかをチェックすること。「ほとんど」ではなく、前提も含めて「すべての」輪がきちんと機能していなければならない。

・オッカムのかみそり。
これは使い手のある直感法則で、こう教えてくれている。「データを同じくらいうまく説明する仮説が二つあるなら、より単純な方の仮説を選べ」

・反証可能性。
仮説が出されたら、少なくとも原理的には反証可能かどうかを問うこと。反証できないような命題には、たいした価値はない。たとえば次のような壮大な仮説を考えてみよう。「われわれの宇宙とその内部の一切は、もっと大きな宇宙のなかの一個の素粒子(電子など)にすぎない」。だが、この宇宙の外からの情報が得られなければ、この仮説は反証不可能だ。主張は検証できるものでなければならない。筋金入りの懐疑派にも、推論の筋道がたどれなくてはならないし、実験を再現して検証できなければならないのだ。

~以上、引用終わり~


 現在、世の中のすべてのことが、科学的に証明されているわけではない。多くの科学者は口をそろえて、科学で解明された事実は、いまだにこの宇宙の事象の一部に過ぎないと話す。

 また、俗世間で生きる私たちは、日常生活の何もかもを「科学的」「客観的」に思考して生きていくのだとすれば、それではいささか味気なく、面白くないこともまた事実だ。

 たとえば私は怪談話やオカルト映画が大好きだし、趣味でもう30年以上も周易やタロットなどの占いをたしなんでいる(笑)。ただしこれらは、人生においてはしょせんスパイスみたいなものだ。

 スパイスはけして、主食にはならない。

 荀子は“善く易を為(おさむ)る者は占わず”といい、易=哲学の十分な学習と理解があれば、占わずとも問題に関して熟考し、合理的にその疑問を解決する道が開かれると説いた。

 同様に21世紀に生きる我々は、標準的な科学的教養に基づいて、人生で直面する多くの問題に対することにより、そのリスクの多くを最小限に止める事ができるはずだ。

 ことに子供の生命と健全な発育に責任を持つ親権者=親は、カルトやデマに惑わされないバランスのとれた教養を常に持ち、子供を生命の危険にさらすような偽医学や反医学、いかがわしい陰謀論から守らなければならない。

 このような「大人/親としての社会的使命」を放棄するのであれば、そういう者は健全な社会を構成する大人にはなりえないし、親になどなってはいけないのである。

 (了)
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最近の偽医療や反医療・デマ・陰謀論について思うこと(その3)/(医療・福祉)
- 2014/10/14(Tue) -
■「江戸っ子大虐殺」という、笑えない陰謀論

~島国の人間は、どこも同じことで、とにかくその日のことよりほかは目につかなくって、五年十年さきはまるで暗やみ同様だ。それもひっきょう、度量が狭くって、思慮に余裕がないからのことだよ。~(勝海舟の言葉/氷川清話より)


 ちょっと前、公共広告機構のCMで、「江戸しぐさ」というのが取り上げられ、広く知られるようになった。

 私も、「ふ~ん・・・」と思っていた記憶がある。

 ところが最近、「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書) 」原田 実 (著)という本が出版された(http://www.amazon.co.jp/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%97%E3%81%90%E3%81%95%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93-%E6%95%99%E8%82%B2%E3%82%92%E3%82%80%E3%81%97%E3%81%B0%E3%82%80%E5%81%BD%E3%82%8A%E3%81%AE%E4%BC%9D%E7%B5%B1-%E6%98%9F%E6%B5%B7%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%8E%9F%E7%94%B0-%E5%AE%9F/dp/4061385550/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1413257664&sr=8-1&keywords=%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%97%E3%81%90%E3%81%95%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93)。

江戸しぐさ
▲最近のトンデモ話解明本としては秀逸な一冊


 いや実に面白い。ちょっと長いが、アマゾンから本書の内容紹介の一文を引用すると、

 「江戸しぐさ」とは、現実逃避から生まれた架空の伝統である。
 本書は、「江戸しぐさ」を徹底的に検証したものだ。「江戸しぐさ」は、そのネーミングとは裏腹に、1980年代に芝三光という反骨の知識人によって生み出されたものである。そのため、そこで述べられるマナーは、実際の江戸時代の風俗からかけ離れたものとなっている。芝の没後に繰り広げられた越川禮子を中心とする普及活動、桐山勝の助力による「NPO法人設立」を経て、現在では教育現場で道徳教育の教材として用いられるまでになってしまった。しかし、「江戸しぐさ」は偽史であり、オカルトであり、現実逃避の産物として生み出されたものである。我々は、偽りを子供たちに教えないためにも、「江戸しぐさ」の正体を見極めねばならないのだ。


 とのことである。

 さらに情報の質はあまりよくないかもしれないが、ウィキペディアで「江戸しぐさ」という項目を見てみると、

「江戸時代における江戸しぐさの実在を示す史料が未発見であることは、「特定非営利活動法人江戸しぐさ」理事長である越川禮子自身も認めている」

 とのこと。さらに爆笑なのは、

「江戸開城の時、『江戸講』のネットワークを恐れた新政府軍が江戸しぐさの伝承を失わせ、江戸しぐさの伝承者である江戸っ子たちを虐殺した。その虐殺たるや凄まじいもので、ソンミ村虐殺、ウンデット・ニーの虐殺に匹敵するほどの血が流れたと越川禮子は述べている。また、この時に江戸商人は江戸しぐさについて書かれた古文書も全て焼却し、江戸の空を焦がしたという。勝海舟は生き残った江戸っ子数万を両国から武蔵、上総などに逃がし、彼らは『隠れ江戸っ子』として潜伏した。池田整治は、江戸しぐさ伝承者は、老若男女にかかわらず、わかった時点で新政府軍の武士たちに斬り殺され、維新以降もこの殺戮は続いたと述べている」

 そうな・・・・。

 幕末に、江戸っ子大虐殺があり、維新後、隠れ江戸っ子たちが潜伏していたとは!(爆笑)。 

 こんな爆笑カルトの語るデマが、いまや道徳教育の教材として一部の学校で本当に使われているというのだから、草葉の陰で新島襄が泣いていることであろう。

 世にトンデモの種は尽きず・・・。

 (つづく)
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最近の偽医療や反医療・デマ・陰謀論について思うこと(その2)/(医療・福祉)
- 2014/10/11(Sat) -
■デマや陰謀論ではなく、「期待される効果と想定されるリスク」で判断しよう

~最初から全てを成り行きに任せる者がおろうか? 全力を尽くし、しかる後、宿命を待つ!~(拝一刀の言葉/子連れ狼 三途の川の乳母車より)


 ファイスブックやネットなどを見ていると特徴的なのが、偽医療・反医療をとなえる人や陰謀論者の多くが、その主張や意見の根拠を示さないこと、あるいはその根拠とすることの多くが、単なるデマや憶測にすぎないということだ。


 たとえばインフルエンザのワクチン接種について、効果がないと主張する人たちがいるのだが、彼らがよく根拠として挙げるものに「前橋レポート」というものがある。

 これは1980年代に前橋市で行われたインフルエンザワクチンの効果を検証することを目的とした調査である。その結果、「インフルエンザワクチン接種は、効果がなかった」という結論を出し、以後、ワクチン接種反対論者の“錦の御旗”になっているというものだ。

 ところがこの「前橋レポート」は、その後の学術的な検証によって、予防接種の効果を低く見せるための意図的と思われるようなデータの操作がされていることが明らかになり、現在はワクチン摂取肯定派はもちろん、まじめなワクチン摂取否定派からも、その信憑性を否定されている。
(インフルエンザワクチンは有効か?安全か?(1)有効性とindirect protection/http://drmagician.exblog.jp/21377410/
(インフルエンザ予防接種ワクチンは打たない派の方へ・・・なんで判ってもらえないんだろう?/http://www.gohongi-beauty.jp/blog/?p=7503



 さて、ネットなどでインフルエンザのワクチン接種を否定する人たちの言い分を見ていると、正直、頭がクラクラしてくる・・・。

 たとえば、彼らは「インフルエンザでは死なない」(だからワクチン接種は必要ない)という。

 その根拠は、

 「インフルエンザはかぜの一種です。『インフルエンザはかぜじゃない』というポスターは、インフルエンザ・ワクチンを打たせるための宣伝なのです」

 だそうな・・・・・・。
(インフルエンザワクチンは打たないで/http://anatanoibasyo.mo-blog.jp/ibasyo/2013/11/post_0b9c.html

 つうかそれ、死なない理由になってねえよ!!


 厚生労働省の発表では、例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1,000万人、国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1,818(2005年)人。

 さらに問題なのは、直接的なインフルエンザによる死亡だけでなく、たとえばインフルエンザに起因して間接的に生じた死亡を推計する「超過死亡概念」というものがあり、この推計によるインフルエンザの年間死亡者数は、毎年世界で約25~50万人、日本では毎年約1万人と推計されているということだ。

 毎年1万人が、インフルエンザによって死亡しているという事実を、重く受け止めてもらいたいものである。
(新型インフルエンザに関するQ&A/http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

 また、インフルエンザワクチン接種に反対する人々は、「インフルエンザワクチンは効かない」「重症化を防げない」という。しかし、国立感染症研究所感染症情報センターでは、

「(インフルエンザワクチン接種は)感染や発症そのものを完全には防御できないが、重症化や合併症の発生を予防する効果は証明されており、高齢者に対してワクチンを接種すると、接種しなかった場合に比べて、死亡の危険を5分の1に、入院の危険を約3分の1~2分の1にまで減少させることが期待できる。現行ワクチンの安全性はきわめて高いと評価されている」

 としており、厚生労働省もこうした効果に基づいて、インフルエンザワクチンの予防接種を広く勧めている。
(インフルエンザとは/http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html

 さらに、インフルエンザに限らず、病気に対するワクチン接種に反対する人たちの多くは、重い副作用(副反応)が起こる危険性を根拠に、ワクチン接種反対を訴えることが多い。

 そこでインフルエンザの予防接種をみると、たとえばギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎などといった重い副反応の発生する確率は、5,024万735人の内53人、その内の4名が死亡している(平成24年シーズンのインフルエンザ
ワクチン接種後の副反応報告について/http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/306-1.pdf

 これをパーセンテージで示すと、重い副反応が起こる割合は0.0001%、死亡例は0.000008%である。

 さらにこれらの死亡例については、9症例のうち8例について、ワクチン接種以前に他の重い病気を患っており、それらの悪化や再発によって死亡した可能性が高く、ワクチン接種と死亡との直接的な因果関係は見られなかったという。

 つまり、平成24年度のインフルエンザワクチン接種における確実な死亡例は、5,024万人のうち1人、死亡する割合は0.000002%ということになる。

 ちなみに、ここ数年議論になっている、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種をみると、たとえば 呼吸困難やじんましんなどを症状とする重いアレルギー(アナフィラキシー)は、約96万回の接種で1回、外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気(複合性局所疼痛症候群)は約860万回の接種で1回、起こる可能性があると報告されている。
 一方で現在、日本で子宮頸がんに罹る人は毎年1万人ほどおり、そのうち死亡する人は毎年約3,000人となっている。(子宮頸がん予防ワクチンQ&A/http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html


 ここで1つ確認しておきたいが、現在、インフルインザや子宮頸がんについて、ワクチン接種は法律に基づいて行われているが、接種を強制されてはいない。

 だからこそなおさら、ワクチン接種による

「期待される効果と想定されるリスク」

 をよく理解した上で、ワクチン接種をするかしないかをしっかりと考え、選択すればよいのである。

 問題なのは、効果やリスクについての正確で科学的な知識・情報を持たず、根拠のないデマや、特定の人物が声高に叫ぶ陰謀論、ネットにあふれる流言蜚語に惑わされ、だまされてしまうことだ。

 その結果、特に子供の場合、予防や治療を拒否することで、結果として防げるはず、治るはずの病気で子供を死なせてしまったり、重篤な後遺症を残してしまうようなこと、つまり

 「医療ネグレクト」につながる可能性が高い

 という事実を、もっと真剣に考えてほしい。


 よく吟味して家族で話し合い、接種を受ける本人自身も可能な限り理解・納得した上であれば、たとえばインフルエンザについて5,024万735回の接種につき53回=0.0001%の確率で起きる重い副反応のリスクを避けるために、あえてワクチン接種を拒否するという選択は、あってよい。

 なぜなら我々の暮らすこの国は、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国と違い、自由と民主主義の国であり、医療においても患者自身が治療法を選択する自由があるからだ。

 しかし子供を養育する義務を負う親権者たる親が、陰謀論者や偽医療・反医療を信奉する人々の流すデマ、根拠不明のいかがわしい情報に惑わされて、科学的に証明されている「期待される効果と想定できるリスク」を考えず、ただ闇雲に副反応などを怖れて治療を拒否するのであれば、それは治療選択の自由以前に、子供に対する「医療ネグレクト」である。

 またインフルエンザの流行は、小学校で始まりそこから地域で蔓延し、療養中の高齢者への感染、そして重症化や死亡につながるということも、子供をもつ親はよく覚えておいてほしい。

 「自分や自分の子供がインフルエンザに罹っても、自然治癒させるからかまわない」などとという人は、自分がウイルスを周囲にばら撒いて流行を後押しし、結果として病弱な高齢者を死に至らしめているという可能性を、よく考えるべきである。

 ちなみに一般的には、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は、感染者は周囲にウイルスを排出するといわれている。


 私には子供はいないが、もし自分の子供にインフルエンザワクチン接種をさせるかを問われたらどうするか? 接種させるだろう。では、HPVワクチンについてはどうか? これはいささか考えるところがある。

 “てめえ事”として真剣に考えると、860万回の摂取で1回=HPVワクチンの接種は1人3回なので、286万人に1人の確立で現れる重篤な副反応というのは、めったにないことではあるが、けして安易に見過ごせるものではない。宝くじでもそうだが、どんなに天文学的な確率でも、当たる時には当たるものなのだから。

 ワクチン接種に限らず、どんな薬にも副反応があり、どんな治療にも効果とリスクがある以上、子供を守るべき親にとって病気やケガの治療選択というのは、実に難しく重い決断である。効果とリスクをよく推し量って、最終的にどちらが子供の生命と将来にとって、安全・安価・有効であるかを考えて判断するしかないだろう。

 だからこそ、強い心でデマや陰謀論、偽医学や反医学の偏った考え方に惑わされず、客観的で正しい知識=適切な教養を武器に、子供の生命と将来を守ってもらいたいと切に願う。

 なお、多くの陰謀論者や偽医療・反医療の人々が、こうしたワクチン接種の問題について、「製薬会社や医療業界による、カネ儲けのための陰謀」とかいいだす。

 しかし、ワクチン接種で病気を予防するのと、予防をせずに病気を蔓延させるのと、どちらが製薬会社や医療業界にとって儲かるのだろうか?

 考えてみればすぐに分かると思うのだが・・・。病気を未然に予防するより、ガンガン流行らせて、薬を大量に処方して、診察もバンバンするほうが儲かるんじゃね?

 「ワクチンは儲からない」というのは、業界の常識なんだけどねえ(苦笑)。

 国(厚生労働省)の方向性としては、子供も大人も高齢者も、病気はできるだけ未然に防止することで、膨大に膨らむ医療費を少しでも抑えていきたいと考えているのが事実だ。

 医療問題に限ったことではないけれど、いい歳をした大人が安易で陳腐な陰謀論に惑わされるのは、いいかげんやめようぜ。

 (つづく)
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最近の偽医療や反医療・デマ・陰謀論について思うこと(その1)/(医療・福祉)
- 2014/10/10(Fri) -
■「医療ネグレクト」の典型例としてのホメオパシー

~モロ、わしの一族を見ろ! みんな小さくバカになりつつある。このままではわしらはただの肉として人間に狩られるようになるだろう…~(乙事主の言葉/もののけ姫より)


 私はケーブルテレビの時代劇専門チャンネルが大好きなのだが、番組の間に流れるCMの多くが、偽医療に限りなく近いようなサプリメントや健康グッズであふれかえっているのにはげんなりする。

 現在市販のサプリメントで、科学的・医学的なエビデンスがあり、何らかの効果が期待できるのはビタミンCくらいで、それ以外はみすみす金をドブに捨てているようなもの。本人が「効いた!」と思ったとしても、それはプラセボ(偽薬効果)に過ぎないというのは、たびたびまともな医療関係者やジャーナリズムが一般向けに啓発しても、一向に正しい知識は広まらない。

 それはそうだろう、サプリメントを製造する企業・販売する業者は、低コストでバカ売れするサプリの販売に、膨大な広告費をかけ、メディアを使って洗脳まがいの、そして不当景品類及び不当表示防止法すれすれの誇大広告を続けているのだから。

 自然科学や物理的法則というのは、ある意味でとても冷徹なので、「治せないものは治せない」「効かないものは効かない」「死ぬときは死ぬ」というたいへんドライなものだ。そこに人の希望や情が介入する余地がない。

 だからどんなに人柄の良い人でも、どんなに家族に愛されている人でも、どんなに社会に貢献している人でも、現在西アフリカを中心に蔓延しているエボラ出血熱にかかれば、100人のうち70人ほどが死亡する可能性があるのだ。

 そこで致死率(致命率)約70パーセントという冷徹な現実にさらされている人に対して、

「今のエボラの流行は、ワクチン接種で大もうけし、体内に極小のGPS端末を植えつけようとするための、WHOと製薬会社の陰謀です。けれど、大丈夫、このサプリを毎日飲めば、きっと治ります・・・」

 などといえば、そのような陰謀論や偽医療がどんなに荒唐無稽で馬鹿馬鹿しいものであっても、患者や家族は藁をもつかむ気持ちですがるのが人情というものだろう。

 しかし当然ながら、エボラの流行はWHOや製薬会社の陰謀ではないし、感染した患者はサプリでは治らない。治るわけがない。

 むしろ、標準医療を拒否してサプリを飲むことにこだわったばっかりに、本来は助かるはずの100人中30人の命までもが失われてしまう・・・。

 こうした

 「医療ネグレクト」

 こそが、偽医療の最大の害悪だ。私利私欲のために(あるいは倒錯した正義感により)、本来助かるべき命を殺してしまうのが偽医療なのである。

 偽医療による「医療ネグレクト」、それによる死亡例として、近年、大きく取り上げられたのが、ホメオパシーを信奉する助産師の誤った治療によって、乳児が死亡した「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%96%B0%E7%94%9F%E5%85%90%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3K%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E5%87%BA%E8%A1%80%E7%97%87%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E4%BA%8B%E6%95%85)だ。

 これに対して日本学術会議会長は、

「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを『効果がある』と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。このことを多くの方にぜひご理解いただきたいと思います」

 との声明を出し、日本医師会、日本医学会もこれを全面的に支援した。(http://jams.med.or.jp/news/013.html

 また日本助産師会会長も報道向けに、

「本会としては、助産師がホメオパシーを医療に代わるものとして使用したり、勧めたりすることのないよう、継続的な指導や研修を実施し、会員への周知徹底を図ります」


 とのリリースを出している(http://www.midwife.or.jp/pdf/hodo.pdf)。

 世界的にも、先進国ではホメオパシーには科学的・医学的な根拠がないとして、医療現場からは排除されることがほとんどだ。

 それにも関わらず、いまだにホメオパシーの効果を疑わず、それによる金もうけを続ける者、そしてそれにだまされる患者や家族が後を絶たないのは、非情に残念なことだ。

 こうした偽医療・反医療による「医療ネグレクト」の問題は、ホメオパシーに止まらず、しかも年々、問題が深刻化しているように感じられる。

 (つづく)
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ニセ医療にご注意!(2) ~ホメオパシーと助産師会の根深い闇/(医療・福祉)
- 2010/07/12(Mon) -
 ホメオパシーといえば、まったく医学的効果がない単なる砂糖玉(レメディ)を、あたかも治療効果があると称して処方する、代表的なニセ医療である。

 そして、このホメオパシーを「信奉」する助産師(!)が、新生児に必要なビタミンKの経口投与を意図的に行わず、かわりにレメディを投与。その結果、子供がビタミンK欠乏性出血症で死亡するという事件が起こり、母親がこの助産師を提訴した。


「読売オンライン 九州発」
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100709-OYS1T00214.htm


今回の事件に対する、科学的専門家の突っ込んだ批判
「ホメオパシー助産師のビタミンK2の問題が裁判になった」
http://blackshadow.seesaa.net/article/156012122.html#more


 さて、まずはニセ医療によって大切な命を失ってしまったお子さんと、そのご両親に、深く哀悼の意を表したい。

 その上で、代表的なニセ医療であるホメオパシーに対して、日本の司法がどのような判断を下すのかという点について、今後も注目したいわけだが、それ以上に関心をひくのが、組織としての助産師会が、これまで組織ぐるみでホメオパシーに関わってきたという事実である。


「助産師会とホメオパシーとの濃密な関係」
http://putorius.mydns.jp/wordpress/?p=716

「ホメオパシーイベント体験談」 
http://www.homoeopathy.co.jp/event/ankeito_2007_11_19_kanagawa_midwife.htm


 近年、慢性的な医師不足にともない、周産期医療における助産師の役割はたいへん大きくなっている。

 にも関わらず、本来、地域社会の中で母子の健康を守るはずの助産師が、組織ぐるみでニセ医療にかかわり、あまつさえそれにより、子供の命を奪ってしまったということは、医療に関わる記者としても、非常に強い憤りを感じる。

 また、上記のように、かなり組織的にホメオパシーに関わってきたにも関わらず、この提訴を受けた形で(社)日本助産師会が発表したコメントは、組織的なホメオパシー団体との関与についての総括と反省、謝罪がまったく示されておらず、責任回避丸出しのうわすべりしたものと言わざるを得ない。


「代替医療に関する本会の見解」
http://www.midwife.or.jp/pdf/k2.pdf


 そもそも、医師と同様に開業権を持ち、医師以外で唯一助産行為が許される専門的医療従事者である全国2万5000人の助産師は、EBM(根拠に基づいた医療:Evidence-based medicine)についてどのように考えているのか?

 (社)日本助産師会は、200年以上にわたり、科学的・医学的な検証でその効果をことごとく否定され続けてきた、ニセ医療行為であるホメオパシーについて、どのような見解を持って、組織的な交流を続けてきたのか、ぜひインタビューしてみたいものである。

 なおホメオパシーの問題点については、以下のリンクに詳しいので、ぜひ読んでいただきたい。


「ホメオパシーと医療ネグレクト」
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20080516#p1

「ホメオパシー - Skeptic's Wiki」
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%A5%DB%A5%E1%A5%AA%A5%D1%A5%B7%A1%BC

(了)
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